腹部大動脈瘤

大動脈瘤

大動脈瘤は、大動脈壁の一部が局所的に拡張して瘤を形成する場合,または直径が正常径の1.5倍(胸部で45mm,腹部で30mm)を超えて拡大した場合に「瘤」と称してます。
腹部大動脈瘤は、およそ臍(へそ)の高さの腹部大動脈に発生します。

原因

動脈瘤は血管の老化現象である動脈硬化が原因となる場合が多いといわれています。

症状

ほとんどの患者さんが無症状で経過します。破裂例は強烈な腹痛、腰痛が生じ、ショックとなり意識消失されることも少なくありません。破裂寸前の状態として疼痛を自覚される切迫破裂にいたることもあります。したがって、無症状の動脈瘤を発見し、破裂前に手術をおこなうことが重要となります。動脈瘤の治療の目的は、まさに、この破裂の予防にほかなりません。

検査方法

腹部超音波などで発見されることがありますが、正確な大きさの診断にはやはりCT検査が必須です。CT検査が難しい場合は当院へご紹介頂けましたら幸いです。

手術適応

直径が5cm以上のものが手術の対象となります。併存疾患の有無や年齢は手術適応(手術をするか否か)には原則的に関係しません。90歳の方でも全身状態に問題がなければ手術を受けることができます。もし5cm未満でもご紹介いただけましたら、当科でCTフォローいたします。

手術

血管内治療
血管内治療は従来の開腹外科手術よりも侵襲性が低く、血管の疾患部の内側にステントグラフトを配置し、動脈瘤を排除(血流から密封)するものです。血管内治療は全身麻酔、部分麻酔又は局所麻酔下で、手術の終了までに概して1-3時間を要します。患者さんは数日入院するだけでよく、通常では手術後6週間以内で日常生活への復帰が可能です。全ての患者さんが血管内治療術に該当するわけではありませんが、当科では解剖学的に可能な限りこの血管内治療を選択する方針にしています。

術前 CT
術後 CT

開腹外科手術
腹部大動脈瘤の伝統的な選択枝です。これは、腹部を切開して疾患部位(動脈瘤)を人工血管で置換し、縫合糸で縫合することによって大動脈を修復する術式です。この手法では人工血管で疾患部位を置換する間は動脈血流を止める必要があります。開腹外科手術は主として全身麻酔下で行われ、手術終了までに約3-4時間を要します。入院期間は約2週間で回復期間は約3ヶ月を要することがあります。
開腹外科手術は腹部大動脈瘤の治療の手段として立証されていますが、すべての患者がこの術式に適応可能なわけではありません。開腹手法に関連したリスクは患者の全身的な健康状態に関係します。

術前 CT
術後 CT

最後に

重度の併存疾患、超高齢、再手術例、ステントグラフト留置後の動脈瘤拡大例、切迫破裂や破裂例など診断に迷われた場合も含め当科にご紹介いただけましたら幸いです。