僧帽弁は心臓に4つある弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁)のうちの1つです。
僧帽弁の病気は加齢に伴い出現することが多く、最初の頃は自覚症状・身体所見は乏しいです。
病気には僧帽弁が硬くなってしまう狭窄症と、僧帽弁が部分的に壊れたりすることによって起こる逆流症があります。
どちらも重症化して初めて心雑音を指摘されることが多い病気です。
さらにその状態から重症化し、心機能が低下した段階で初めて強い息切れを自覚するようになるのが僧帽弁疾患の特徴です。
重症化してから初めて手術を希望される患者様が多いこの疾患ですが重症化する前に早期に手術を受けるほうが術後の経過・心臓機能回復がよいため、手術のタイミングは適切な判断が必要です。
重症の僧帽弁閉鎖不全症の患者様では症状がなくとも、早期に手術をすると手術をしない患者さまに比べて生存率が良好になります。僧帽弁狭窄症の患者さまでは、歩行時や階段昇降時などの息切れの症状がある場合は、手術をしないままだと、年ごとに生存率が低下していきます。
患者様が特に気になる点が年齢の点と思われます。
高齢だから手術はできない等の基準は一切ありません。80歳代でも日常生活を元気に営まれている患者さまであれば手術は安全に施行可能であり、その後の生活の質も向上します。
手術方法には次の2つがあります。
[ 1 ] 僧帽弁形成術・・・自分の組織を温存する方法です。僧帽弁全体を切り取らずに、病変部分を切り取って縫い合わせ、僧帽弁本来の機能と同じようにする手術です。
[ 2 ] 僧帽弁置換術・・・自分の弁の変性が強く温存できない場合に行われます。僧帽弁全体を切り取って弁輪に人工弁を縫い付ける手術です。主に狭窄症に適応になることが多いです。
近年はMICSや ロボット支援下でのMVR(僧帽弁置換術)MVP(僧帽弁形成術)や Mitra Clipのような低侵襲心臓手術も行われています。
よく耳にする疾患ではないため、病気・手術のイメージがつき難い患者様も多くいらっしゃると思われます。僧帽弁疾患に関してお悩みの際はいつでも気軽に、心臓・血管外科の外来へご相談ください。