急性大動脈解離について

急性大動脈解離について

大動脈の壁は内側から内膜、中膜、外膜という3層構造で出来ています。この内膜と中膜の間に何らかの原因で亀裂(解離口)を生じ、血液がそこから流入して新たな間隙(偽腔)をつくり、これが縦方向に伸展したのが、大動脈解離です。

大動脈解離の症状は突然の胸痛、背部痛が生じるのがほとんどですが、時に腹痛や足の痛み、脱力が生じることもあります。解離の及んでいる部位によりStanford A型とB型に分類されます。
Stanford A型は心臓から出てすぐの上行大動脈に解離が及んでいる状態です。偽腔の壁は通常より薄くなるため強い血液の流れや、圧力によってすぐに破裂したり、あるいは大きく膨らんだ後に、破裂する危険があります。そのままでは70%の患者さんで発症してから2週間以内に死亡します。また、心タンポナ−デ(心臓のまわりに血液がたまって心臓を圧迫する)や心筋虚血という致死的な合併症があるため、通常は診断がつき次第緊急手術の適応になります。手術は、解離した血管を人工血管で取り替える手術が行われますが、解離の及んでいる範囲によって取り替える範囲も変わります。
Stanford B型は頚部の血管が分岐した後の下行大動脈以遠に解離が及んでいる状態です。基本的には安静とし血圧を下げる治療を行いますが、大動脈径が持続的に拡大したり、臓器血流の低下を認める場合、症状が強い場合などには手術が必要となります。手術方法はステントグラフトにより解離口を閉じる治療が行われます。(ステントグラフトの項を参照)