経カテーテル大動脈弁留置術/置換術
(TAVI/TAVR)について

TAVI/TAVRとは

TAVI(タビ)もしくはTAVR(タバ)は心臓の弁(大動脈弁)が硬くなって、開きにくくなった状態(大動脈弁狭窄症例)に対する新しい治療法で、カテーテルと呼ばれる医療用の管を用いてご自身の大動脈弁を人工の弁と置き換える治療法です。80歳以上の高齢の方やこれまでその他のご病気で手術に耐えられないと判断された方や、最近では一度大動脈弁置換術の手術をされた方などに, 胸を切らずに手術ができる治療方法となります。(図1、2)

(図1)TAVI(TAVR)の手術方法
(図2)大動脈弁置換術(生体弁)を受けられた方のTAVI(TAVR)

2002年にフランスでこの治療が始まり、2013年より本邦でも行えるようになり、当院では2015年より開始しました。TAVIに使用する人工弁は、金属の網(ステント)の中に生体弁(ウシやブタの組織から作った弁)を縫い付けたものです。本邦では3種類の人工弁が使用でき、大動脈弁および大動脈弁輪部の形態や大きさなどからどの弁を選択するか決定します。またカテーテルを通す場所も複数あり、基本的には太ももの付け根の太い動脈からカテーテルを通す「経大腿動脈アプローチ」が大部分を占めますが、血管の状態によって経大腿アプローチが適さない場合は、肋骨の間を切り心臓の下端(心尖部)からカテーテルを通す「経心尖アプローチ」や上行大動脈、鎖骨下動脈からのアプローチを行います。(図3)

(図3)TAVI(TAVR)カテーテルの挿入部位

TAVIの適応

大動脈弁狭窄症と診断された方
あるいは生体弁を用いた大動脈弁置換術を過去に行ったことのある方のうち

[ 1 ]ご高齢の方(概ね80歳以上)

[ 2 ]大動脈弁置換術(心臓手術)がハイリスクと思われる方

  • • 胸部の放射線治療の既往のある方
  • • 肺気腫などの呼吸器疾患のある方
  • • 肝硬変などの肝疾患のある方
  • • 過去にバイパス手術などの開胸手術をしたことがある方
  • • 悪性疾患合併のある方(1年以上の予後が期待できること)
  • • 生活の強度が落ちてしまっている方(シルバーカーや車椅子の使用)

※ただし透析を行なっている方は、現在この治療は行うことはできません。最終的にハートチームでの検討結果を踏まえて患者様と治療方法を決定します。

TAVIの適応

  1. [ 1 ] かかりつけの病院・クリニックから当院へご紹介いただいてください。 火曜日の午前:大動脈弁狭窄症外来にて診察します。
  2. [ 2 ] 検査(外来もしくは入院)・・・TAVI治療を含めた治療法検討のために必要な検査を行います.基本的には外来で検査を行いますが場合によっては2泊3日~3泊4日程度の検査入院を行うことがあります。検査の内容は、血液検査、心電図、胸部レントゲン、呼吸機能検査、頸部血管超音波、血圧脈波、心臓超音波、心臓CT、心臓カテーテル検査(入院検査)などとなります。
  3. [ 3 ] ハートチームで治療方法を検討・・・検査結果と患者様の病状やご希望等を総合して循環器内科・心臓血管外科・麻酔科の各専門領域の知見から最善の治療方法(TAVI, 大動脈弁置換術もしくは内服加療)を検討します。外来にてその結果を患者様にご提示します。
  4. [ 4 ] TAVI入院治療・・・TAVI治療となった患者様はTAVI治療の数日前に入院していただきます。通常のTAVI治療は1時間程度で、合併症なく経過されればリハビリや術後検査を行い1週間程度で退院となります。
  5. [ 5 ] 退院後の通院・・・退院後数回当院に通院していただき、その後はかかりつけの病院・クリニックでの通院となります。ご希望があれば外来リハビリも可能です。TAVIは新しい治療方法ですので、当院の専門外来(TAVI後外来)にも半年、1年毎に通院検査をしていただきます。
  6. 生活の強度が落ちてしまっている方(シルバーカーや車椅子の使用)

循環器内科医・心臓血管外科医・麻酔科医・専門看護師・臨床工学技士・放射線技師・理学療法士からなるハートチームが患者様と協力して治療を行ってまいります。

画像提供元: エドワーズライフサイエンス社, 日本メドトロニック株式会社